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【新渡戸稲造】「我、太平洋の架け橋とならん」今から120年以上前に国際連盟で活躍した男の話(武士道より)

新渡戸稲造は、日本と世界をつなぐ架け橋として国際連盟で活躍し、その生涯を通じて平和と教育に尽力した偉大な人物である。彼の功績は現代にも影響を与えている。
現在人には、1983年~2003年まで発行された旧5,000円札でも記憶に新しい。

2003年に公開された、トム・クルーズ主演のアメリカ映画「ラストサムライ」の中で、桜の花を見ながらサムライ役の渡辺謙とトムが会話するシーンがある。

勝元(渡辺 謙):Like these blossoms, we are all dying. To know life in every breath, every cup of tea, every life we take. The way of the warrior.
この花のように、われわれはみんな死にゆく運命だ。1つ1つの呼吸の中に、茶の器に、われわれが奪った者たちにある命を知ること。それが戦士の生きる道だ

オールグレン(トム・クルーズ): There is Life in every breath...
1つ1つの呼吸の中の命・・

勝元(渡辺 謙):That is, Bushido.
それが武士道だ

武士道とは何か?
新渡戸稲造が世界に発信し、世界30か国以上で翻訳されたベストセラー「武士道」をベースに紐解いていきたい。

農学者としての貢献

まずは、新渡戸稲造とはどんな人だったのか?
彼は、台湾の発展に尽力した。農商務省御用掛として活動し、2年後に渡米している。農業技術の普及や農業改革に尽力し、台湾の農業発展に寄与したのだ。

国際連盟事務次長

新渡戸は国際連盟で重要な役職を務めた。彼は国際連盟事務次長として、国際的な協力と平和の促進に尽力している。その仕事は、国際社会の調整と協力を通じて平和を築くことに焦点を当てていた。
それは、以下言葉に象徴されている。

我、太平洋の架け橋とならん

「武士道」の普及

彼の著書「武士道」は世界的に高い評価を受けた。この本は、日本の武士の精神と道徳規範を解説し、日本人の道徳を世界に発信するためのものであった。武士道は、勇気、誠実、忠義、礼儀などの価値観を強調し、多くの読者に影響を与えたのである。
「武士道」は世界30か国以上で翻訳され、ベストセラーとなった。この本は、日本人のサムライに受け継がれた価値観であり、日本人の道徳を形成するものとして評価された。新渡戸の思想は、多くの人々に感銘を与え、今現代でも世界中で読まれている。

武士道の各概念を簡潔に解説していく。
ここで全ての「武士道」を網羅することは出来ないが、主な概念を紹介していきたい。

    • 意味: 義は、正しい行動をとることを指す、正義感である。
      卑怯な行動や不正を憎む正義感であり、現代ビジネスシーンで言うとコンプライアンス(法令順守)に通じるものがある。また、大義名分が無いサービスやプロダクトをグロースさせるのは難しい。現在のSDGsやグリーン投資が注目されていることからも分かるだろう。
    • 意味: ただ勇敢なだけで無く、正義のために奮う勇気がある。正しいことを実行するための豪胆さを表す。
      現代のビジネスで例えると、事業推進力に通じるものがある。課題や困難、事業リスクに立ち向かい、ミッション・ビジョンを果たす勇気を持つことで、立派な行動を支える力となる。
    • 意味: 弱者、敗者に対する思いやりがある。
      これは、マネジメント能力に当てはまるだろう。新入社員や中途入社の新人に対して、親身なアドバイスや教育を施すこと、これが中長期で考えると、チーム全体、または事業の拡大に貢献する。
    • 意味: 礼儀正しさ、他人の気持ちを思いやり、相応の敬意を払う。
      この点は、社会人として共通の認識だろう。クライアントに対する最低限の礼儀、社内外のビジネスパートナーへの相応の敬意、それ無くしてビジネスは成り立たない。
      仮に自己利益だけを追求している組織があるとしたら、決して長続きはしないだろう。サステナブルな組織構築は、各社共通の課題である。
    • 意味: 信頼、口に出したことは命を懸けて守る心構えがある。
      命を懸けてとなるとやや重たいが、ビジネスシーンにおいてもパートナーや顧客との信頼関係は重要だ。
      特に営業を経験したことのある人は想像しやすと思うが、信頼を得るには小さな行動の積み重ねが必要だ。一方で、その信頼を失うのは一瞬である。
      「この人なら任せられる」「この人の言うことなら信頼できる」
      そういう関係を作ることこそ、継続的ビジネスを生む秘訣と言っていいだろう。
    • 意味: 目上に対する服従と忠実、ただし追従するわけではない。
      上司への服従、それは必ずしもご機嫌取りや従順を意味するものでは無い。ただ、一定の成果と評価を得た目上の人間への敬意は、忘れてはならない。
      「転職」は忠義に反するか?決して、そのようなことは無い。お互い敬意と信頼を得ることで、退職後も良きビジネスパートナー、または相談相手として関係が続くことはよくある。
      また、忠とは単なる追従では無く、自分の意見やスタンスを持ち一貫性のある態度を維持することも大切だ。
    • 意味: 単なる知識では無く、叡智を持つ。
      叡智とは、単に表面上の知識では無く、物事の本質を分析し理解することだと思う。
      例えば、受験勉強の数学のテスト、表面上の知識だけだと、少しひねった応用問題が出てくると回答できなくなる。一方、本質や原理を理解していれば、多少の変化球でも公式に当てはめて回答することが出来るのに似ている。
  1. 名誉
    • 意味: 武士の身分に伴う、義務と特権を重んじる
      現在において「武士」という身分は無いので、想像するのが難しいかもしれない。ただ、名誉については現代でも共通する価値観だ。
      自分が所属する会社に誇りをもって行動する、自分を生んでくれた両親への感謝と恥じない行動をとることを心掛ける、それは名誉に通じる部分がある。
  2. 克己
    • 意味: 克己は、自己を律することを指す。
      自分の欲望や感情を抑え、自制心を持ち感情をあらわにしない。強い意志と精神的な成熟を示す。
      人間誰でもワガママや欲求は存在する。ただ、それを適度に制し、自分の美学にそって行動することは大切だ。このバランスが崩れると、企業や家族間でも争いが生じる。
      もし身近に争いが起こっている人がいたら、一歩ひいて冷静に考えてみて欲しい・・客観的に、今の自分は恥ずかしい行動をとっていないかを。

五千円札の肖像

新渡戸は、様々な功績から五千円札の肖像に選ばれた。このお札には、太平洋を中心にした地球が描かれており、新渡戸の「我、太平洋の架け橋とならん」という言葉を表現している。彼の国際的な役割と平和への貢献が象徴されている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

平和への尽力と最期

新渡戸は、平和に尽力した生涯を送った。彼はカナダのビクトリアで客死したが、その生涯を通じて平和と教育に尽力した功績は、私たちにとっても大きな影響を与えている。

花巻市・新渡戸稲造記念館を訪問

私は、花巻市にある新渡戸稲造記念館を訪問した。あの大谷翔平の出身校である花巻東のある場所だ。
こじんまりした田園風景の中、もと新渡戸稲造が住んでいた跡地に記念館は存在する。

私が当館を訪れた日は、晴れ渡る青空に田舎の田園風景が広がる見事な景色だった。花巻駅から当館までは少々時間がかかる(1H前後)が、帰りのバスの時間など館内の従業員の方が親切に案内してくれた。
また、平日だったこともあり、ほぼ貸し切り状態で新渡戸稲造の功績と展示物を鑑賞することが出来た。
興味ある方は、ぜひ一度訪ねてみて欲しい。

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SHIRYU

東京で働くサラリーマン👔趣味は、映画と歴史、たまに旅行、土日はだいたい酒飲みながら映画観てます。 自分の経験と趣味を交えて、ためになる情報を発信していきたいと考えている今日この頃・・

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